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《福祉コラムVol.5》知的障害者がストレスを感じるのはどんなとき?

今回は、

  • 知的障害者が職場で感じるストレス、悩みにはどのようなものがあるのか
  • 知的障害者が日常生活で感じるストレス、悩みにはどのようなものがあるのか
  • 知的障害者が感じるストレスと上手く付き合っていくには

の3点についてお話しします。

知的障害者にとっての職場でのストレス

現在、民間企業で働く障害者は約56万6千人で、障害者雇用で働く人の数は年々増加しています。一方で、離職率が高いことも問題視されています。知的障害者の場合は3割の人が1年以内に離職するというデータもあります。

そもそも、知的障害者は特性上コミュニケーションや集団生活で困難が生じることが多い障害です。職場にもよりますが、一般的に多くの人がいる場所で、同僚や上司と上手くコミュニケーションを図りながら仕事を進めていかなければなりません。

知的障害者にとって職場は、ストレスを感じやすい場と言えるのです。

では、知的障害者が職場で実際に困りやすいことを見ていきましょう。

報告・連絡・相談ができない

知的障害者の方には、自分の意思を表現したり、質問したり、自分で判断したりすることが苦手な方が多くいます。そのため、課題の解決方法を自分で考えたり、困った時に相談ができない、相談の仕方がわからないと悩むことがあります。

また、複数の人から複数の指示を受けたり、人によってやり方が違うといったことで、知的障害者は混乱してしまい、誰に相談してよいか分かりにくくなってしまいます。

仕事内容を覚えられない

仕事内容を理解するのに時間がかかったり、記憶が苦手であるために、仕事内容をなかなか覚えられない人も多くいます。根気よく繰り返し教えてくれる上司であればよいのですが、周りと同じようにできないと叱責されることもあります。

人によりますが、耳で聞くより目で見た情報の方が理解・整理しやすい場合があるので、指示書に写真や絵入りのものを用意してもらったり、大事なことはその都度メモでやり取りするなどの工夫をするとよいでしょう。

人間関係がうまくいかない

空気を読むことや暗黙の了解を理解するのが難しく、職場で孤立してしてしまうことがあります。また、職場によっては、その人の障害に関する情報が共有されておらず、配慮や理解が充分でない場合もあります。業務を行う上で何ができて、何が苦手なのか、どのような配慮をどう行う必要があるのかを職場全体に周知してもらう必要があります。

このように、職場では、業務内容や業務環境、人間関係によるストレスが多いようです。

障害の状況や特性は一人一人違うので、その人のための配慮事項や支援がしてもらえるかどうかは重要ですね。

日常生活の悩み

知的障害者の方は、日常生活でも様々な困難と向き合いながら生活しています。

文字や数の理解

知的障害の方は、程度によりますが、文字や数の理解に困難がある方がいます。

平仮名は読めるが漢字が読めない、時計が読めない、お金の計算ができない等、日常の様々な表示や概念が理解しづらいことがあります。

本人が生活の中でよく使う言葉や数字は習得していることが多いですが、新しいものや急に尋ねられた時などは困ってしまいます。

手先の不器用さ

手先の不器用さや体の使い方のぎこちなさから、日常生活の中の様々な動作に時間がかかったり、支援が必要な場合があります。

衣服のボタンを止めたり、靴紐を結んだりするのに時間がかかったり、髭剃りがうまく使えなかったりします。

感覚の過敏さ、こだわり

知的障害の方には、感覚過敏があったり、こだわりをもっている方がいます。

感覚過敏とは、聴覚、視覚、触覚等の感覚からの刺激を強く受けてしまい、その感覚によって今すべきことに集中できなくなったり、気持ちが落ち着かなくなったりする特性です。

例えば、聴覚が過敏で他の人は気にならないような換気扇や冷蔵庫の音が気になったり、駅やお店の中といった様々な物音、話し声、BGM等が同時に聞こえる場面で、全ての音が聞こえすぎて目の前にいる相手の話し声が聞き取りにくいこともあります。

触覚が過敏な方は、衣服は生地によって着られなかったり、帽子が被れない、腕時計ができない、耳かきができないなど、体に触れるものに敏感な方がいます。

こだわりは、その人特有の決め事のようなもので、例えば、曜日によって食事のメニューを決めていて、その通りにいかないと落ち着かない、ルーティーンになっているものや、人によって最初に交わす言葉を決めており、あいさつよりそのこだわりを優先してしまう等、人によってその内容は様々です。

それが、毎回確実に実現可能なこだわりならよいのですが、例えば、毎晩特定のアニメ番組を見てから就寝すると決めている人がいたとして、そのアニメ番組が野球中継のため放送されなかった場合、急な変化に対応できず眠れないということもあります。

電車やバスで

電車やバスを利用するときに、行き先や駅名等の表示の理解が難しく、切符の買い方が分かりにくいということや、漢字が読めない人にとっては案内板が読めないことがあります。

また、公共の交通機関では、障害者手帳を持っていると障害者割引が使えますが、電車やバスの事業者によって運賃の支払いや精算方法が異なる場合があります。

知的障害者の方が交通機関を1人で使う場合には、事前に行き方を確認して、事前に練習する場合もあります。

理解力、コミュニケーション力の不足

日常生活の中で使われる様々な案内や便利と思われる機能も知的障害の方にとっては、かえって分かりにくいことがあります。

例えば、携帯電話の長押しや組み合わせによる機能や、機種によって操作方法が違うことで分かりにくいと感じています。

また、ピクトグラムのような案内表示はものによって形が異なるのでわかりにくいことがあります。

言葉でのコミュニケーションが苦手で、自分の思いをうまく伝えられなかったり、相手の意図を読み取ることが難しかったりする場合があります。

思ったことをそのまま口にして相手の気分を害してしまったり、自分のしたい話を一方的に延々としてしまったり、空気が読めないと思われることがあります。

このように、日常生活でも様々な悩みとストレスを抱えています。

知的障害者がストレスとうまく付き合っていくためには

職場でも日常生活でも悩みやストレスを抱えやすいのが知的障害者の方の生きづらさだと思いますが、ストレスを完全に無くすことはできないので、できる限りストレスを軽減し、うまく付き合っていくことが大切です。

では、具体的にどういった対処法があるのでしょうか。

ストレス反応に気づく

ストレスが溜まると精神面や身体面にストレス反応が出ます。

精神面では、物事に集中できない、忘れやすい、気分が落ち込む、などです。

このような状態に気づかず、慢性的にストレスを抱えてしまうと、うつ状態や不眠症などを引き起こすこともあります。

身体面では、過呼吸、めまい、頭痛、胃痛、発疹など体のあらゆるところで不調が表れます。

本人は気づけなかったり、なんとなく気づいていても自分から伝えられなかったりするので、家族や支援者、職場でも普段と違う様子に気づいてあげることが大切です。

リラクゼーション方法を取り入れる

心身の緊張を緩めるリラクゼーション方法を身につけることもストレス解消につながります。

簡単なところでは、腹式呼吸をしてリラックスしたり、ストレッチをして身体の緊張を解いたり、体の凝りをほぐしたりするとよいです。

適度な運動

適度な運動を習慣化することで、定期的にストレスを解消し、溜め込まないようにすることも大事です。

適度に運動をすると交感神経の興奮が抑えられ、副交感神経の働きが優位になり、リラックス効果が得られます。

言葉を使って感情をコントロール

自分自身にポジティブな「勇気の出る言葉」を投げかけるとストレスが緩和されると言われています。

ストレスを感じてイライラしたり、気分が落ち込んだりしてしまう時に、感情をコントロールするための「自分だけの言葉」を用意し、自分自身に語りかけます。

「落ち着こう」「大丈夫」「自分ならできる」等のシンプルな言葉で、気持ちを落ち着け、ストレスを緩和できることがあります。

快適な睡眠

睡眠時間を十分にとることと良質な睡眠をとることはストレス発散になります。

睡眠の質も大事で、安心してリラックスして寝られる環境づくりや、寝具の改善も効果的です。

寝付き、寝起きが悪い、途中で起きてしまう等の問題がある場合は、医療で解決できる場合があるので、専門家に相談するのもよいでしょう。

相談できる相手をつくる

悩みを他人に話すことで、自分のストレスを客観的に捉えられることがあります。

他人の視点から自分では思いつかなかったストレス解消法が見つかるかもしれません。

家族や友人、支援者や職場の人で、ちょっとしたことでも気軽に話せる相手をもっておくことが大事です。

そして、ストレスが心身に異常をきたしている場合は、我慢せずに早めに医師に相談しましょう。

まとめ

以上、知的障害者の職場や日常生活でのストレスとその対処法についてまとめてみました。

ストレスと上手く付き合って、心身の疲れはなるべく溜め込まないように気をつけたいですね。

知的障害者の方が自分らしく生活できるよう、周りの支援者や職場と連携しながら、助け合える環境づくりをしていきましょう。

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